孫悟空丸山インタビュー2

初めてのタイ修行で身につけたことが、
その後に実を結ぶ…。

なかなか5回戦での試合が決まらなかったのと、ムエタイの練習っていうのに興味があったんで、練習と試合をしにタイに行くことにしたんです。タイへは5回戦にあがるずっと前に、アマチュアムエタイの試合で行ったことはあるんですけど、練習というのは初めてですね。



↑タイ修行中に、同じくタイ修行に出ていた
高津選手と会ったときのショット。

お世話になったチュワタナジムは、家の土間みたいなところにリングを作ってやっているような、小さな所だったんです。でも、やっている選手はみんな強い選手ばっかりで、ちびっこ選手もいないようなところなんですね。選手は揃ってるし、みんな巧いんですよ。サンドバッグとか叩いてると、隣で当時ジュニアフライのチャンピオンだった選手とかが練習してるんですよ。蹴りのパワーとか、テンポとか、もうぜんぜん違って、見てるだけで練習になるような感じなんですね。選手とかみんなアットホームでよくしてくれたし、雰囲気はすごくよかったですね。ボクはジムの中で生活して、練習は1日2回、午前と午後にするんですけど、日曜日だけは練習をしないんで、友則さん(フライ級佐藤友則選手が借りていた部屋)のところに逃げてました。


タイで教わったのは、そのプレーに集中することが大切だってことですね。それまで、ボクは意識して集中するってことができなかったんですよ。すぐに集中力が切れちゃうんです、会長にも何度も言われたんですけど。つい途中で「次はどうなるんだろう」とか、変に意識が行っちゃって集中が途切れてしまうんですよね。悪い癖なんですけど、練習中でも「あ〜、このミット終わったら、首相撲やって、次また連打とかあるんだろうなぁ」とか考えちゃうんですよ。そうするとそのプレーにも集中できなくて、いいプレーはできないし、覚えることも半分になっちゃう…。その点、タイの人はひとつのことに集中しやっていて、例えばミットとかもそのラウンドごとに集中してやってるんですよね。その集中力は、見ていてすごいなって思いました。


タイでは、まず朝っぱらから10qランニングして、それから練習して、あれしてこれして…って感じなんです。他の人は淡々とこなすんですけど、ボクは走るだけでも大変なんですよ。だから、走るときには走ることに集中して、次のことを考えないでやらないとやってられないんです。「これが終わったら、あれやって…」って考えちゃうと、途中で嫌になっちゃうんです。だから、今はこれ、サンドバッグはサンドバッグ、ミットもラウンドごとに集中して…ってやるようにしました。

だから、タイでの試合も5Rだからどうとか、次のことを考えないで「1Rもったらいいや」ぐらいのつもりでやったんですね。(結果・1RKO勝ち)

集中することに集中する…それだけなんですけど、今まではそれが出来なかったんですよ。先のこと考えたり、悪いこと考えたり…。それがタイに行って「今のプレーに集中するってことが大切なんだ」って意識できるようになっただけでも、ずいぶん違うなって思いますね。集中していれば、学ぼうという気持ちも強くなるし、実際、学ぶ事も多くなります。


あと、タイでは練習中に教わったことを、ノートにとるようにしていました。始めは言葉を覚えるのが目的だったんですけど、途中から練習自体のことを書くようになって。そのことがきっかけで、どうすればいいのか、どうやればいいのかってことを、客観的に見られるようになったんですよ。今はノートはとっていないんですけど、それでも練習を客観的に考えられるようになったと思うんです。見方が変わってきたんですね。ただがむしゃらにやっていいたのが、変わってきたような気がします。それが結果に出たとはまだ思わないんですけどね、いつか結果に出したいなと思いますね。

「今のプレーに集中する」。
そして掴んだ大きな1勝。

9月の試合(vs 弘中戦)は、ちょっと5Rを意識しすぎたんですね。タイでやったときみたいに、1R勝てばいいみたいにやればよかったんですけど…。相手もガンガンこなかったんで「体力温存してるのかな」とか、手の内を探るようになっちゃって。もっとやりようがあったような気がしますね。まだ、駆け引きとかできないんだから、1Rごとに集中してやればよかったと思いましたね。野崎戦は、相手のほうが頭使ってやってましたね。ローをきかせてパンチ。パンチはきかなかったんですけど、ローがきいちゃって…。


高野選手は、それまでずっと負けなしだし、ハードパンチャーだって聞いていたし、他の人も「あれは強いよ」とか言ってたんで、距離をとって戦おうと思ったんです。でも試合前に高津先輩に「その距離は相手の得意な距離かもしれないけど、そこは丸ちゃんの得意な距離でもあるんだから詰めろ。俺が首相撲得意だからって、みんな距離を置こうとするけど、結局それでも俺が相手の首を取ってるだろう。だから相手の距離とか考えないで詰めていけ」っておっしゃてて、清水さんも「やりあっていけよ!」とか言ってくれたんで、もう前に行くしかないなって感じでした。


でも、やっぱり相手は距離の詰め方は巧いし、肘とかハイキックとか使ってきて、最初は「巧いな」って思いました。で、2Rが終わった時点で、高津先輩に「次が勝負だ、行け!」って言われたんですね。3Rも相手の圧力の方が強くて、あのダウンのときは、パンチ一発一発がきいたって感じで、思わず横を向くような形でロープを掴んでスタンディングダウンをとられたんです。すごいプレッシャーを感じたし「ヤバイ」とは思いましたよ。それでも、高津先輩の「前に行け」って指示が聞こえたんで、「前に行かなくちゃいけないんだ」って思ったんです。最初のダウンの悪いイメージをひきずらないで、ここで切り替えて集中できたことがよかったですね。

途中で、左か何かがあたって、一瞬相手が止まったんですよ。そのときに会場の「わぁ〜っ」って声が聞こえて、「そうだ、もっといかなきゃ!」って、どんどん出て行ったら相手が下がったんですけど、相手がダウンしたときのことは全然覚えていないんですよ。右が最後に当たった感じがして、気づいたら相手が倒れてたって感じで。「倒れてるのかな。でもボクのパンチじゃすぐに起き上がってくるだろうな」って思ってたんですよ。だから、コーナーに下がれって言われても、すぐに飛びかかれるように準備してたんです。「立ったらすぐ行かなきゃ、すぐ行かなきゃ!」って。そしたら高木修二さん(レフリー)に怒られちゃいました(笑)。


ただ最後に、パンチ打って、膝蹴り打って、またパンチ打ってってやってるんですよね(高津選手はこの膝蹴りが有効だったと褒めていました)。この膝蹴りは練習をいっぱいしたので、それが試合で出せたってことはすごく嬉しいですね。

試合後のことは覚えていないです。ビデオで見ましたけど踊ってましたね「猿だな〜」って感じですね(笑)。でも、お客さんが喜んでくれて嬉しいですね。試合とかって、友達とか知り合いの方が、チケット買ってくれて、普段会わないような人でも「アイツの試合だから」って集まってくれるでしょ。だから、そういう人たちがボクの試合を見て喜んでくれたってことは、ホントうれしいですね。

両親はまだキックをやることに反対はしてるんですけど、父親はたまに試合を見に来てくれるんです、母親はだめですけどね。でも、心配はしてくれているので、きちんと次の日に勝利報告をしました。「あぁ、そうなの」って、ちょっと驚いていましたね(笑)

キックを始めて6年ぐらい。デビューして5年たちますけど、全然成長したとは思いませんね。逆にどうしてこんなに成長が遅いんだろうって思うぐらいです。目標もまだ達成されてませんし…。練習はハードで、最近じゃもう一日じゃ疲れがとれないし、ヤバイんですけど(笑)。でも、好きなことをやっていられるんで毎日楽しいですね。

Next→